歯科治療とどう関係する?
高血圧症
血圧は痛みやストレスを感じると血圧をコントロールするホルモンのようなもの
(カテコールアミン)がたくさん出て上昇します。
歯医者でチェアに横たわったときや麻酔の注射をしてもらうとき、抜歯をするときは
緊張しますよね。この時体はストレスを感じて血圧が上がっています。
これは普段、血圧が高くない方にも起こる現象で『白衣性高血圧』と呼ばれます。
血栓症
抗血栓薬を服用している方は、出血が止まりにくくなります。
これは抜歯やインプラント治療などの外科治療を受けるときに影響します。
抜歯の際は大きな血管を切ることはないものの、それでもじわじわと出血が続きます。
多数の歯を抜かれる場合は病院の歯科口腔外科での治療が望ましいこともあります。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は体の骨だけでなくあごの骨にも影響しますので、
骨粗鬆症の方はインプラントを入れるのが難しいですが、それ以上に知って
いただきたいことがあります。骨粗鬆症のお薬を飲んでいる方は、
骨代謝を人為的に変えるお薬の影響により、抜歯やインプラントなど
侵襲の大きな治療を受けた後にあごの骨の壊死(顎骨壊死)が起こることがあるのです。
頻度は推定0.1%(飲み薬の場合)と多くはないものの、
一度発症すると治りにくい非常につらい病気です。
糖尿病
糖尿病はいわば血管の障害です。血流が悪くなり、栄養や免疫細胞が届きにくくなる
ために感染への抵抗力が弱まり傷の治りが悪くなります。
そのせいで細菌感染を起こしやすく、炎症もひどくなりがちです。
歯の根にできた病変からあごの骨に炎症が広がって顎骨炎になったり、
インプラント周囲炎から首回りに炎症が広がることもあります。(蜂窩織炎)
抜歯の後やインプラントを入れた後も傷が開きやすく、感染を起こしやすいです。
ステロイド剤
炎症というとよくないものと考えられがちですが、細菌に対して体が戦っている証拠
でもあります。ステロイド剤を長期間服用されている方は、炎症や免疫反応が
起きにくくなるので、細菌感染が起きやすくなります。
そのため抜歯後や手術後の傷が治りにくく、膿んだり腫れたりしやすいです。
歯科治療に限らず、医療行為は体にストレスを与えます。副腎皮質ホルモンは
そうしたストレスが体に与える影響を軽減する作用があります。
しかし、ステロイド剤の長期服用は副腎皮質ホルモンの分泌を抑えますので、
抜歯やインプラントの治療後に、発熱や嘔吐感、筋肉の痛み、血圧の低下
といった体調の悪化を覚えることがあります。(副腎クリーゼ)
ここまでお読みいただいたように、持病とお薬は意外なところで歯科治療に
関係してきます。めったにないとはいえ命にかかわるケースもありますので
歯科受診の際には必ず持病やお薬についてお伝えいただければと思います。
お持ちであればお薬手帳をご持参ください。